5枚目「gossypium hirsutum」

コットン

gossypium hirsutum

gossypium hirsutum、品種:アップランド綿(upland cotton)、繊維長:2.2cm〜3.2cm、花色:淡い黄,クリーム(中央は紫、或いは赤)、葉の形:掌形(表面に細かな毛が生えている)

・葉の表面に、蜜を分泌する花外蜜腺を持つ

・この種は現在において、アメリカの綿花生産量のおよそ9割を占める

gossypium hirsutumの名の由来

この種の”hirsutum”という名はラテン語の”hairy”に由来し、葉や茎の表面の毛が生えた様子を表している。

アップランド綿の名の由来

“アップランド”(upland)とはアメリカ合衆国南東部の内陸の高度が高い地域を指し、乾燥地域を比較的に好む種が生息する場所。

この綿花種の一部もまた、そのような地域に分布し、”高い”標高の”土地”という意味を持つ”アップランド”という名が付けられた。

繊維の長さが意味するもの

メキシコ西岸や南米のチリ、ペルー沿岸、そしてエジプトといった場所は共通して、地球の自転と大気の循環、山脈や高地などの地形、それらの要因が絡み合い生まれた陽の光が豊富な乾燥地帯。

それらの地域を中心に広がるgossypium barbadense。それに対し、

gossypium hirsutumは雨が比較的多い、ブラジル南部やアメリカのミシシッピ川流域といった温帯地域、更に北のニューヨーク、つまり厳しい寒さが覆う地域に至るまで、その分布を広げている。

ただし、

この分布は、この種に生産的な価値を見出した人の手によるもの。

gossypium hirsutumはアメリカの綿花栽培の9割以上を占める。

それらの気候と人の影響が合わさり、この種は同大陸のgossypium barbadenseに比べ繊維の長さにおいて、短い傾向を示す。

花の色が意味するもの

この種の花の色もまた他のほとんどの綿花種と同様、中央に赤、或いは紫を配し、その周りを淡い黄の色が繊細な彩りを呈している。

また、その淡い黄は細胞の中の小器官の一つである液胞に色素として蓄積され、昆虫達の視界に現れる。

それは、液胞という植物の身体の中でも重要な役割を果たす場所で行われる仕事のほんの一部。

水、酵素、養分、そして色素。

植物の働きに欠かせないあらゆる成分が、この貯蔵庫へ運ばれ、保管されている。

葉の形が意味するもの

葉に見られる切れ込みは空気の流れを促す。

それにより、葉の周りの空気の層、すなわち葉の境界層は薄くなり、境界層抵抗と呼ばれる、光合成と呼吸を妨げる働きを最小限に留めている。

この働きは、比較的湿気がある場所や熱帯地域に特有のもの。

一方、葉の表面に生えた細かな毛。

これは、空気の淀みを葉の表面に作り出す。

そうしてできた空気の防壁は、水を葉の表面に保ち、過度の乾燥から身を守る。

葉の光合成と呼吸を促すために境界層を薄く保つ葉の切れ込み、葉の表面を乾燥から守るために形成された細かな毛

それらはメキシコから、ミシシッピ川流域に広がる温帯地域で育まれながら、分布の一部を乾燥地帯に、表面の毛という乾燥を凌ぐための葉の特徴と共に本能的に残しているのか、

或いは、二つの相反する特徴はこの種の、身体全体のバランスを保つための、意図的な共存の結果なのかもしれない。

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